色鮮やかな思い出
2023.1.3
新年の挨拶と顔を見るために、祖母に会いに行った。
祖母は、綺麗で、チャーミングで、おしゃれで、お上品で、ユーモアがあって、手先が器用で、完璧に主婦業をこなしながら趣味も極める職人気質もあって、強くて、優しくて…良いところや尊敬できるところを言い出せばキリがないほどで、そんな祖母がわたしは昔から大好きだった。
祖父も祖母のことが大好きだった。祖父は数年前に亡くなってしまった。厳しくて不器用で真面目、人付き合いが好きで愛情深く熱い人だった。毎日祖母と小さいメモでやりとりをしていて、文の最後にはいつも「行ってきます。愛しているよ」と添えてあった。祖母はそんな祖父との思い出話や惚気話をいくつもしてくれる。
ふたりはとにかく仲が良かった。当時幼かったわたしでもわかるほどにラブラブだった。色んな場所へおでかけするのが好きで、祖母の趣味の一つでもあったお着物にふたりで身を包みモナコやカナダに行ったという話は何度も聞いた。
お見合いの話や結婚当初の大変だった話、喧嘩した時の話まで、本当に色々聞かせてもらったと思う。
今日もそんな話を聞いていると、ふとテレビの前にゴムで縛られた小さな写真の束を見つけた。カメラに向かって微笑む若い頃の祖母のお人形さんのようなスタイルと女性らしいポージングはモデルかと思うほどで、あまりの美しさに驚いた。
(いまだってあり得ないほど美しいから、よく考えてみたら納得であった)。
いつのものか聞くと、祖父と新婚旅行でお互いを撮り合ったものだという。ずっとふたりで撮り合っていたのか2ショットはほとんどなかったが、祖父はカメラが好きだったらしくいろんな表情の祖母を捉えていてとっても楽しかったんだろうなあ、というのが写真から伝わって胸がじんわりと暖かくなった。
祖母は数年前からゆるやかにではあるが、直近の記憶が曖昧になってきており、同じことを聞いたり言ったりすることが少しずつ増えてきていた。
でも、昔のことはとても鮮明に覚えていて、これまでに沢山聞かせてもらってきたわたしでもまだ聞いたことのなかったような話を突然してくれる。写真を見れば「これは北海道に行った時ね」「これは京都よ」などと細かく説明してくれて、人間というのは不思議だな、と思った。
きっと、ずっと昔のことですっかり忘れたように思っていても無意識のうちに心の奥に綺麗に染み付いていて、何年経っていたとしてもきっかけがあれば色鮮やかに思い出せるものなのだろう。
いま祖母が思い出していることはそういった宝物のような思い出だと思うから、わたしも祖母と一緒に思い出を旅行するような気持ちで、そこに想いを馳せたいと思った。
わたしが祖母と同じ年齢になった時、どんなシーンを思い出すんだろうか。