人はみんな不満なんだよ
2023.1.29
2016年公開の映画「ヒメアノ〜ル」を鑑賞した。
「行け!稲中卓球部」や「ヒミズ」などを描いた漫画家の古谷実の作品で、森田剛や濱田岳、ムロツヨシなどの俳優さんたちによって実写化された。
手に汗握る系の作品は苦手なので基本的には避けているのだが、最近森田剛の演技を絶賛している記事を目にすることが増え、そこでこの作品がおすすめされていて密かに気になっていた。さすがにプロジェクターで大きく観るのは怖かったので、作業をしているPCで小さいウィンドウにして観ることにした。思い出すと怖いので細かいネタバレはしませんが少しばかり感想を(ビビりか)。
開始から45分間はなんだか笑える日常系のラブコメ風映画。冴えない先輩役のムロツヨシと、素朴な岡田を演じる濱田岳がいい味を出している中、森田剛演じる森田が現れて度々ピリッとしながらもゆるやかに進んでいく。
ところが45分を超えてから空気が一変。暗転したように暗い雰囲気になり、そこで最初のポップなタイトルとは打って変わった恐怖を煽るフォントのタイトルにR15+の表記が出る。ここの表現は怖さよりもかっこよさで震えた。
タイトルの出し方だけでなくて、残酷なシーンの中でも特に印象に残る衝撃な表現が何個かあって、監督は一体どういった思いでこれを撮ったのだろうかと気になってインタビュー記事を漁って読んだ。そこには「とにかく人がやらないようなことをしたかった」と書いてあった。なるほど、だからどのシーンも斬新に感じたんだ。どうやら原作とは違った表現や語られなかった部分もあったようで、比較しているサイトを見て色々腑に落ちたところもあった。
あと森田剛の演技は噂通りすごかった。
この役は激しくて狂ったインパクト重視の凶悪犯といった演技ではない。飄々とした感じ、一線を超えてしまったら危ない危険人物な空気の纏い方、こんな人いそう...と思える普通な人感、そして当たり前のように狂っている感じ、全てが共存していてコロコロと表情を変え魅せていく。スッと入ってくる演技にすっかり見入ってしまった。
演技や映像の魅せ方が素晴らしかったおかげと、怖いシーンはフォトショの作業ウィンドウでしっかり隠して音量を1にしたので、怖いながらもそれなりに楽しんで観ることができた(楽しんだことになるのか...?)。ただ夜に観るのはあまりおすすめしません。