大好きなお店、さようなら。
2023.3.26
地元にある大好きだった喫茶店が突然閉店することになった。
もう50年も続いていたそうだ。
その喫茶店には物心ついた頃からよく母に連れられて食べに行っていた。ヒゲがふさふさで雰囲気のあるマスターはいつもニコニコ話しかけてくれて、小学生のわたしをまるで本当の孫かのように可愛がってくれていた。
地元の人たちもみんなマスターが大好きで愛されているのがよくわかるいいお店だった。
わたしが小学校の高学年になるあたりから10年ほど東京に行っていてしばらく行けていなかったが、その後大阪に帰ってきた時にもまだ喫茶店はいつものようにあったしマスターも変わらず覚えていてくれてとても嬉しかったのを今でも覚えている。
バイトができる年齢になった頃、マスターが声をかけてくれて働かせてもらうことになった。たまに通うくらいではわからなかったが、濃い常連さんが本当に沢山いた。特にモーニングがそうだった。
注文のときもお会計のときもずっと無口なおじさんはいつも新聞を広げてコーヒーを飲むだけなのだが、たまに甘いケーキを選んできて、唯一その時だけ会話ができた。
ラブラブでエレガントな老夫婦は、意外にも食事のあと決まって2人でパチンコに行っているらしかった。
ほぼ毎日のように来ていた若い親子はいつもバタバタと食事をして慌ただしい人たちだったが、実はお父さんが近所のお医者さんでモーニング後に出勤し、お母さんは子供を園に送るというハードルーティーンだったようだ。
お客さんが注文で無理を言っても、マスターは「ええよええよ」とできる限りのことをしてあげていた。メニューにない種類のパフェをごねた子供に「他の人には内緒やで、特別やからな」とスペシャルパフェを出してあげていて、みんなが笑顔になった。
まるで絵本に出てきそうなやさしいマスターがわたしは大好きだった。
そんなマスターのお店が終わってしまう。当たり前にあり続けてくれるかと思っていた。当たり前なんてものはないのだな、と悲しく寂しい気持ちになった。
最後にお店に行きよく食べていたランチセットをいただいた。
エビフライや唐揚げ、トンカツにポテトにゆで卵、サラダというよくばりで誰もが喜ぶランチセットにゆかりのかかったご飯と甘いお味噌汁。もうこのお店でこれが食べられないなんて、とちょっと感傷に浸りつつしっかりお腹を満たして笑顔で帰った。
大好きなお店をありがとう。50年間お疲れ様でした。