水族館にいる魚たちは、ここが海じゃないことに気付いているんだろうか。

行き止まりばかりの水槽の中を、ずっとぐるぐるしてることをわかっているんだろうか。

 

世界はこんなものかと思って気にしてないかな。それとも隣の国の海に行きたくて必死で抜け道を探しているかな。99%安全は保証されているけど毎日決まった場所を死ぬまで泳ぐのと、命の危険こそあるが勇気さえあればどこまででも自由に行ける海、好きな方を決められるとしたらここにいる魚たちはどちらを選ぶだろうか。

 

さて、わたしならどちらを選ぶだろう。

ちょっと前までは前者を選んでいたと思う。安全であればのびのび暮らせるしそれこそが心が穏やかでいられると。でもきっと今なら後者を選ぶかな。行けるところまで行って食べられちゃったらそれはそれで仕方ない。海が広いことを自分の力で知れるということに価値があると思うから。

 

目の前を泳いでいる魚たちを眺めているとこの水槽で海の一部を切り取って見せてもらっている気になるけど、そもそもわたし、海のすべてを知らないな。これは海の一部でもなんでもないのかも。ちょっと覗いたくらいですべてを知った気になっちゃいけないな。

 

ぐるぐるぐるぐる泳ぐ魚を見ながら、わたしの頭の中もぐるぐるぐるぐる。今の自分と重ね合わせては、ぐるぐるぐるぐる。

from