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食道行きのチケットを

2023.5.18

わたしはナッツ類が苦手だ。

食べられないわけではないしアレルギーでもなんでもないけど、食べなくていいのなら極力食べたくないなという感じ。

 

ナッツ類というと、くるみ、アーモンド、マカデミアナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、などがあるけどその中でもくるみとマカデミアナッツが群を抜いて苦手だ。何が嫌って多分、ゴロゴロした食感で口の中が支配されるのとシンプルに風味があんまり好きじゃないんだと思う。

 

例えばしっとりしたケーキにゴロゴロしたくるみが入ってると「邪魔されてる」と思ってしまう。大好きなハーゲンダッツもマカデミアナッツだと素直に幸せ気分になれない。こうなってくると、食べることで反射的に険しい顔になってしまうし歯が進まなくなる。ナッツたちは何も悪いことしてないのに申し訳ないなあと思いつつもどうしようもなかった。

 

ところが先日、革命が起きた。

 

鶏のささみを茹でて割いたものに大葉もしくはバジルの葉と塩少々とマヨネーズを混ぜた副菜をいただいたときのこと。ナッツをまぶすと美味しさが倍増するよと言われ、本当は気が乗らなかったがせっかくおすすめしてくれてるので食べることにした。

 

渋々口に運ぶ。すると驚くほど美味しくて「!?」と思わず反応してしまった。「これなんてナッツ?これなら食べられるかも!」と言ったそのナッツはカシューナッツだった。ナッツナッツしてなくて、食感も程よくて風味も控えめで、これはいけるナッツだ。

 

いままで「ナッツ」というだけでなんとなく全部まとめて無理だったから気にしたことがなかったんだと思う。あまりの美味しさに家でも再現するためカシューナッツを購入した。やっぱり美味しく食べられる。険しい顔にもならなかった。

ささみがなくなってしまいカシューナッツがまだまだ残っていたので、消費するためにも手作りのシーフードグラタンにまぶして焼いてみたところ、これもまた邪魔せずいい感じのハーモニーを奏でてくれている。天才なのか?

控えめでいい意味で存在感はない。独特の風味もほんの少しだけ。でもそれが最高にいい。

 

苦手だと思っていたものがひとつ食べられるようになった♪

と、るんるんしていた。

 

そんな喜びも束の間、後日母から「おすすめのお菓子があるから絶対食べてほしい」と言われ渡されたのはアーモンドやくるみがキャラメルみたいなものでコーティングされたお菓子だった。「ぅわあ...」と声が漏れる。

いくらカシューナッツがいけたからって、こういうのはさすがにまだ苦手だというのを3回程伝えたが、食べてみてほしいと懇願されたので仕方なく食べた。案の定やっぱり苦手で、一瞬で顔が般若みたいになった。

 

やはり無理なものは無理。

カシューナッツだけにわたしの食道行きのチケットを渡すことにした。

from 有