久々に静かな夜だ。

 

このところ家の周りがうるさくて、なんだか落ち着かなかった。

 

やんちゃな叫び声と響き渡るバイクの音。

楽しそうに騒いでいる酔っ払いの声。

救急車やパトカーの鳴り止まないサイレン。

そして遅い時間に始まる工事の音。

 

毎日こんな音と共に夜を過ごしていたから、落ち着かないことにも慣れてしまっていた。

 

そんな今日、パソコンに向かっていたら、ふと、静かなことに気付いた。

あれ、夜ってこんなに静かで心地の良いものだったかな。

 

珍しくいつもの音がなにもない。

だけどイヤホンやヘッドホンでノイズキャンセリングをした人工的なシン…とした静けさとは違う。

ささやかな車の走る音と、柔らかい扇風機の風に揺られるポスターの音だけのこの感じこそ本当の静けさのように思える。

少しひんやりとした優しい時間。たまに通るバイクの大きめの音も、今日ならいいスパイスになってる。

 

最近考えてばかりだったから脳みそが煮えて味の濃いクタクタのどて煮みたいになっていたけれど、この静かな夜がクタクタになったわたしのどて煮脳みそに少し水を足してくれたような気がした。味の濃くなった考えが、ちょうどよく薄まっていく。

 

ああ、いいな、静かな夜は。

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